自治体、隠れ負債の失敗
●新聞記事
日本経済新聞1月27日(日)
隠れ負債、自治体に重荷・公社や三セクに対する債務保証
地方公社や第三セクターに対し、地方自治体が債務保証や損失補償をする、いわゆる「隠れ負債」が一部市町村で大きな負担になっている実態が明らかになった。総務省の2007年3月末時点の資料によると、健全性の基準となる「標準財政規模」を隠れ負債が超えた自治体は青森県大鰐町や北海道夕張市など11あった。塩漬けの土地を抱える土地開発公社向けに保証しているケースが多い。自治体が債務の肩代わりを迫られれば財政運営に支障が生じ、住民サービスの低下につながる可能性もある。
自治体別の隠れ負債が判明したのは初めて。総務省の資料を基に日本経済新聞社が集計したところ、税収などに基づく「標準財政規模」に対する比率が全国で最も高かったのは青森県大鰐町で223%。同町の標準財政規模は32億円だが、大鰐地域総合開発など3法人に対して73億円の損失補償をしていた。バブル期のリゾート開発の失敗で金融機関から肩代わりを求められ、1997年から30年計画で返済している。
●失敗の記録
①なぜ、自治体が公社・三セクの債務を肩代わり(債務保証)?
P(plan):
公社利用による社会資本整備等の政策の実現、第三セクター利用による効果的・効率的な公共的事業の実行、自治体の収支面の改善の目的のため、各自治体が設立・運営。
しかしながら、官の設立であるため民間企業にある機動性はなく、民間も地域金融機関をはじめとした地方主要企業の出資者も、最大出資の行政側におんぶにだっこで「お任せ」といった姿勢であった。加えて、公社や第三セクターに出向している行政職員も2,3年で転勤するなど継続した長期的な展望を持ちえず、天下り役員を受け入れていることで優秀な人材の育成という点でも問題があった。
D(do):
例えば、土地開発公社であれば、土地の先行取得等の経費のほとんどを地域金融機関からの借入。
しかしながら、土地の先行取得のほとんどがバブル期に取得したものであるなど、その後の地価の下落が、簿価(取得時の価格)と時価(現在売却可能な価格)との間に大きな差(評価損)が生じ、売却できたとしても大きな差損(売却損)が生じることから、この差損を埋めるにも事業が既に後ろ向きで収益を生まない以上、公社単独では不可能となっており、処分もできずに地域金融機関への返済も利息据え置きなどの条件変更を続けた結果、ますます借入額だけが増加していくといった悪循環となっている。地域金融機関が支えられないと判断すれば、自己査定で破綻懸念先にランクダウンし、より返済を求めることとなるが、ここで、公社の債務保証を行っている自治体に保証の履行を求めることとなる。
C(check):
これまで自治体の財政指標は十分にはディスクローズされておらず、財政状況指標の徹底開示が義務化されれば 不良債権処理が終わっていない土地開発公社、第3セクターなどの自治体の隠れ負債が明らかになり、地方自治体の財政的な体力差が一目瞭然となる。国や地方自治体は、市場化テストの本格実施をはじめ行政サービスの民間開放や団塊世代の退職不補充など一層のコスト削減とダウンサイジングを模索することになる。出資者あるいは債権者である地域金融機関も、指定金融機関・指定代理金融機関として首根っこを押さえられている結果、株主としての当然果たすべき役割のみならず、本来果たすべきメインバンクとしての役割も自ら放棄している。
A(action):
改善に向けた対応策については、これまでも不十分となっているが、地方行政から見ると第三セクターは「身内」であり、この意識こそが甘えを生んでいると言える。
●用語解説
『公社(こうしゃ)』とは
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
政府の出資する法人であって、その名称に「公社」の文字が用いられているもの、あるいは地方公共団体が地方住宅供給公社法(昭和40年法律第124号)に基づく地方住宅供給公社、地方道路公社法(昭和45年法律第82号)に基づく地方道路公社及び公有地の拡大の推進に関する法律(昭和47年法律第66号)に基づく土地開発公社又は、地方公共団体の出資する公益法人その他であって、その名称に「公社」の文字が用いられているもの等の総称である。
『第三セクター』とは
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
第三セクター(だいさんセクター)とは、国および地方公共団体が経営する公企業を第一セクター、私企業を第二セクターとし、それらとは異なる第三の方式による法人という意味である。略して三セク(さんせく)とも言う。
日本においては、国または地方公共団体が民間企業と共同出資によって設立した法人を指すことが多く、その場合、多くは設立が比較的容易でその運営方式も自由な株式会社の形態を採る。当初は旧国鉄およびJR各社の赤字ローカル路線(特定地方交通線)を引き受ける事業主体としての第三セクター鉄道が有名だったが、それ以外にも1980年代後半以降、「民間活力の活用」(民活)というスローガンのもと、地域振興などを目的とした第三セクター会社が政策的に各地に設立された。
『標準財政規模』とは
1.財政規模とは、その地方公共団体の標準的な状態で通常収入が見込まれる一般財源の規模を示す指標である。
2.公共団体が通常水準の行政サービスを提供する上で必要な一般財源の目安となる数値で、財政分析や財政運営の指標算出のためなどに利用される。
※より専門的には・・・
((基準財政収入額)-(地方道路譲与税+ 特別とん譲与税+自動車重量譲与税+航空機燃料譲与税+交通安全対策特別交付金 )) ×100/75+(地方道路譲与税+ 特別とん譲与税+自動車重量譲与税+航空機燃料譲与税+交通安全対策特別交付金 ) +普通交付税
の算式で求められる。
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